「絶対にひとりにはなるな」

榊さんや仁さんから最近の奏さんの裏事情を少しだけ聞いたときには、わたしより奏さんのことの方が心配だった。

「龍神会が動き出してきているので、りおさんは決してひとりにはならないように」

榊さんはわたしの学校の行き帰りにも細心の注意を払う。

「校内にも目を光らせてはいますが、念のために」

「りお、俺たちが迎えに行くまでは校舎から一歩も出るんじゃないぞ」

仁お兄ちゃんが眉をひそめる。

「俺たちはこういうのを着てるが、りおは制服の下に着ることはできないからな」


仁お兄ちゃんは自分のスーツの内側を捲って胸に手を当てた。

「…防弾の?」

ベストみたいな少し厚めの生地?

「まあ、そこまででもありませんが、りおさんにはこういうのを着せる生活をさせたくないので迎えに行くまでは校舎から出ないように」


運転席から榊さんがミラーでため息混じりにわたしを見た。