地下にある駐車場の外れで高級車に乗せられ、傍らに腰を下ろした仁さんを見た。

仁さんの横顔からはなんの感情も読み取れなくて不安になる。


「ねぇ、仁さん…わたしをどこに連れて行くの?お屋敷に一緒に帰るんだよね?ね、そうだよね?」


仁さんがわたしを……なんて、嘘だって言ってほしかった。

わたしにナイフを突きつけた彼女がわたしに話したことはデタラメだと。
彼女の言ったことはすべて彼女の作り話だと。
全部嘘なんだって言ってほしかった。


「ねえ、お屋敷に帰ろう?」

「………」



見覚えのない道を走りだした車。

運転手は振り向きもしなければ、声も発しない。
ミラー越しに見ることもない。


「帰ろ?仁さん…」

「………」


泣きたくなったのをぐっと堪える。
泣いてなんていられない。
奏さんと榊さんが映画館で待っている。

今頃はわたしが戻らないのを心配してきっと探してる。