アルコールと女の香水の匂いが混じり合い独特の香りが漂っている店内。
「琉依く〜ん、早くこっち来てぇ〜♪」
既に酔っ払った様子の女が俺の方を見つめながら手招きしている。
俺の本名は柳瀬 凌。
琉依(ルイ)というのはこの店での俺の名前で、いわゆる源氏名と呼ばれるもの。
俺は自分の本当の名を捨てて琉依としてずっと生き続けている。
「由里子さん、今日も来てくれたんですね。嬉しいです」
「だって毎日、琉依くんに会いたいくて仕方ないんだもん」
この由里子という女は、某有名企業の社長を夫にもつ大事な客の一人。
ほぼ毎日店に来ては俺を指名して高い酒を飲みまくった後、酔い潰れながら帰っていく。
「今日もいっぱい飲んじゃうからね〜♪ 高いお酒でも何でもいいから沢山持ってきちゃって〜」
すっかり上機嫌になった女は、近くにいたボーイを呼びつけて様々な高価な酒を注文していった。