「アハハッ・・!」

「・・・。」

俺は今、病室で屈託なく笑う
ベッドの病人に
時々目をやりながら
一緒に映画を観てる。

入浴が許されたその日の晩、
彼女は風呂から
上がってくるなり
借りたDVDを再生し始めたんだ。

もう、すっかり食いついて
泣いたり笑ったり大忙しだ。


「ああ・・いいなぁ、
ずるいよ・・神はニブツ以上、
この女優さんに与えてない?」

「以上?」

「女の子が欲しいもの
全部持ってそう。」


二枚目の『13番街の住人』を
観終わった後で
首をもたげ、
フウと溜息がちに云うのだ。


「そんな事ねえよ、本人はもっと
身長が欲しいっつってたし・・。」

「えっ?」

「あ・・、前にテレビで云ってた。
・・さ、また明日だ。
そろそろ寝なきゃな。」

「もう、こんな時間? 早~い・・。」


危ねえ・・・
つい口を滑らせちまった。

俺が急かす様に
ポータブルを閉じると
ブウブウ云いながらも
やっと布団に潜り込んだ。

枕元の灯りも薄暗くしてから
おやすみのキスの代わりに
おでこに掛かる髪をクシャ・・と
手でその柔らかさを
確かめてかに撫で上げてやる。


「フフ、明日からは
どんな挨拶をするつもり?」

「さあな・・
考えとくよ。じゃ、オヤスミ」


麻美はあの男から貰った
バンダナ風の帽子を
台の上にもう用意していた。

ひょっとして・・
コレを被りたい為だったりして。

だけど、女ってのは
案外強いもんだ。
イザとなったら
即決しちまうんだもんな。