東京とは違う寒さに震えながらホームを降り立つ。約束では、派遣会社の管理社員が迎えに来ているはずだ。

しかし、10分が過ぎてもだれもいない。


(ちょっと、どれだけいい加減な会社なのよ)


凍るような冷たさがつま先を侵食し、痛みを覚え始める。不安を覚えて携帯を開いたとき、後ろから声を掛けられた。


「あんた、日興ワークの人?」

「あ、はい」


見ると、酒やけした赤ら顔の男性が立っていた。


「えーと、海野さん」

「はい」

「じゃあ、とりあえず事務所で説明するから、ついて来て」


言われるがままにワンボックスに乗り込むと、そこには他に男性二人の先客がいた。

この人たちも同じ現場で働くのだろうが、それにしても生気のない顔をしている。一人は20代半ばくらいだろうが、もう一人は明らかに50代に手が届きそうな年齢に見える。

こんな年齢で、派遣会社に登録なんて出来るのだろうか。募集要項には、たしか35歳くらいまでと明記してあったはずだが。