夏子さんが案内してくれたネカフェは、一見すると確かにネカフェには見えない。

看板はいちおう出ている。

が、子供の110番ほどの主張しかしていない小さな看板だ。

住宅街のさらに裏通りといった風情で、入り口はコインランドリーになっている。その中にある素っ気無いドアを開くと、そこがネットカフェになっていた。


「こんなとこ、お客さん来るんですか?」


思わずそう尋ねていた。

なんだか寮や民宿の玄関のような場所だ。ここがネットカフェだとは誰も思わないだろう。

夏子さんは、唖然とする私を見て、笑いながら言う。

「全然、他の客を見ることなんてないもん」

その笑いに応えるように、奥から声が響いてきた。

「あんたが来ない昼間はね、これでも少しは客がいるんだって」

姿を見せたのは小太りのおばさんだった。

玄関のすぐ横のドアを開けると、中に入ってゆく。すると今度は玄関の横に開いている小窓から顔を覗かせた。

「遅かったじゃないか。今日はふたり?」

いかにもカウンターで受付してますよ、とでも言いたげなその行動がおかしくて、私は思わず吹き出していた。

夏子さんも、そんなおばさんに、あきれたような声をかける。

「そこに立っててもいいじゃん。どうせ千円もらうだけでしょ」

「カタチだけでもしっかりしてたらさ、ネットカフェみたいだろ」

「ネカフェ行ったことあるの?」

「ねえよ」

もう私は悶絶しそうだ。涙が目尻からにじみ出てくる。