リヴェン・プール王国のフィル王子は、悩んでいた。

昨晩、父である国王・ムーシュが姿をくらました。

フィルは何度も、目の下にまで伸びた前髪を、細い指でいじっている。

国王の失踪は、城の者以外には知らせていない。

フィルは動揺を隠せない。

その姿に「落ち着いて下さい」と、彼の付き人・ロッツォは、言葉を掛けたいのだが、本人も落ち着けない。

王座の間は、不安で染められている。

「……たくっ!何してんだあのジジィ!!」

「フィル王子、今は落ち着いて下さい。」

やっとその一言を掛けれたが、彼を逆撫でした。

「落ち着け?お前、こんな状況でよく言えたな。」

「す、すみませんでした。」

「俺は、王子だぞ?お前たちなんかより魔術が使えるんだぞ?なにを王子に命令してんだよ!」

フィルは鋭い目付きで、ロッツォを睨んだ。

ロッツォはうつ向いた。

フィルは短気で子どもな性格。

たまたま王子に生まれたばかりに、頑固で我が儘な性格に育ってしまった。

父のムーシュ以外の人間を見下し、自分は偉いと思い込んでいる。