「ち…っ…」

俺は、百花のいなくなった部屋で悪態を吐いた。

でも、部屋には虚しく木霊してますますイラついてしまう。



赤く染まった百花の顔を思い出すと、胸が痛くて。

涙が出そうになる。



それと、今更の後悔。

『別れよう』なんて言葉で、簡単に終わってしまうような想いではなかったのに。



何に対しての怒りなのかは、分からない。

ただ、百花の“本当の気持ち”を知るのが怖かった。

真実を突き付けられるのを、恐れた。


…俺は逃げたんだ――。