さて、物語は一旦朝まで遡る。

陽、葉也、きょうこの三人が山中で遭難寸前にまで追い詰められる事も知らずに、意気揚々と小夜の祖父の家を出発した頃。

「準備はいいかい?お嬢さん方」

宜虎は片手に木刀を担いで振り向いた。

「ちょっと…宜虎君、これはどうにかならないのかしら?」

芽々が少々不満げに言う。

彼女、そしてその隣に立つ小夜は、大きなリュックサックを背負っている。

着替え、毛布、寝袋、使い捨ての食器など。

キャンプに必要な道具が詰まっている。

「贅沢言っちゃあいけねぇぜ芽々。キャンプなんだからそんぐれぇの荷物は覚悟しといてもらわなきゃな」

そう言った宜虎は、小夜や芽々よりも更に大きな荷物を背負っていた。

折り畳んだ状態のテント二つ、飯盒、ランプ、簡易テーブル。

流石に男だけあって、重たい荷物は率先して持ってくれていた。