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コンサートの日は次第に近づいてくる。

スカイはダンスレッスンや、歌番組の収録におわれる日々を送っていた。

少しでも早く完璧に近づけなければならない。

「最近、陽と楓仲良くね?」
南がレッスン中に、ぽつりと呟いた。

新曲のパート練習を各自で行っていたのだが、数日前より確実に、誰が見てもわかるほどに楓と陽は仲が良かった。

郁は二人に視線を向けて、うなづく。

「そうだな。…ま、いいんじゃないか?」

「とかなんとか言って~。本当は気になるんじゃねえの?お前、陽と一番仲良かったもんな。」

南がさりげなく言った言葉が、郁の胸にずしりと伸し掛かった。

「んなわけないだろ。」

「ふ~ん。」




「陽、ダンスうまくなったね。」

「楓のおかげだよ。」

この調子なら、コンサートの日までに全曲踊れるようになるかもしれない。

陽は嬉しそうに笑った。

「何にやにやしてんの。キモい。」

「酷っ」


南の言葉が脳内をぐるぐると支配する。

郁は自然と二人の会話に耳を傾けてしまっていた。

「あ。」

「郁、そこは左足が前だ。」

柚希に言われてハッとなった。

「ごめん。」

何処か上の空の郁を見て、柚希は盛大にため息をつく。


「...遊びじゃないんだぞ。」

「・・・。」


遊びじゃない、
そんなこと、言われなくてもわかってる。

けれど、陽と楓が仲良くしているのを見るとどこかチクリと胸が痛んで

良くわからない気持ちになるのだ。