「陽君。」

楓の視線が突き刺さる。ことりは焦った。

自分のせいで、たったの二日間しかない新曲のレッスンを最後まで

受けることができなかったのだ。

ことりは戸惑った表情で楓を見る。

「...本当に体調悪いの?」

「ぜ、全然平気!大丈夫!」

笑顔を張り付けて彼を見れば なら、いいけど。 と言う。

ことりの家の方向とは別の方へ向けて歩き出す彼をみて不思議に思った。

どこかに行くのだろうか。

「ねえ、楓」

「何。」

「どこいくの?」

「僕の家に決まってるだろ。」

「え?」

「練習」

体調悪くないなら、僕の家で練習する。と言う。

本来ならダンスレッスン後に練習する予定だったのだが、

半強制的に帰宅命令が出されてしまった為にしょうがない。

「楓の家に行ってもいいの?」

「仕方ないでしょ。場所がないんだから」

ことりは息を飲んだ。

男の子の家には行ったことがない。

いくらダンスレッスンのためと言えど、緊張しないわけがなかった。










「ここだよ」

「でっか...。」

目の前にあるのは、大きな屋敷だった。

自分の家の3倍はありそうな楓の家に、言葉が出ない。


「何突っ立ってるの?」

「あ、今いく」

声をかけられて、慌てて彼の後につづいた。