「お疲れ様です。」

控室で着替えて、ことりは帰る仕度をした。

この後はもう仕事がない。

「ことりちゃん、家まで送ってくよ?」

「この後予定あるんで、いいです!」

「そう?じゃあ、お疲れ~。明日の18時からのダンスレッスン忘れないでね。」

「わかりました。...あ、木村さん!」

「何?」

ことりはひとつ、気になったことがあった。

「学校って、どっちの学校に通えばいいんですか?」

「ことりちゃんは、ことりちゃんが通っている学校に通っていいよ。

陽さんが通う学校には長期休暇の届を出しておいたから。」

陽が通う学校は、芸能人が多く通う学校らしい。

郁、南、楓も陽と同じ学校に通っている。

「そうなんですか...じゃあ、もう行きます。お疲れ様でした。」

もう一度丁寧に挨拶をすると、木村は笑顔でことりに手を振った。

学校から、郁との待ち合わせ場所までは近い。

まだ結構時間はある。

なんとなく、兄の事が気になった為に

病院に向かうことにした。









病院に入り、まっすぐと陽の病室に向かう。

受付のナースが驚いたような表情で自分を見ていたことには気づかない。


ガラ、

病室には、母親はすでにいなかった。

きっと帰ったのだろう。

ベッドで気持ちよさそうに眠る陽を見て不思議な気持ちになる。

「お兄ちゃん...。」

何故か、兄の事を嫌いだとは思わなくなっていた。

今日、兄がしている仕事を身をもって体験したからだろうか。

知らないところで苦労しているんだと理解できた。

「私、今、お兄ちゃんの代わりに仕事してるんだよ...。」

聞こえているかわからないが、話しかける。

「いままで、ごめんね...。」

ぽたり、

ことりの瞳から、涙が落ちた。