「ことり、お母さんは陽君を迎えに行ってくるから。アンタは学校に行ってなさいね」

「...うん。」

次の日、母親は仕事を休んだらしい。

朝早くから陽を迎えに行く準備をしていた。

ことりは高校の制服に着替えて学校の用意をする。

前と何も変わらないのに、何故か物足りない感じがした。

陽の仕事用の携帯は昨日返した為に持っておらず、

今後スカイのメンバーと連絡を取り合うこともないだろう。

急な別れに、胸が苦しくなる。

しかし、別れを告げることもできない。

「...ハァ、」

無意識についたため息で、我に返ると時計を見て慌てて鞄を持ち学校に向かった。






「森山せんぱーい!」

「え?」


突然背後から声をかけられ、振り向けば楓の妹の彩乃が居た。

「会うの久しぶりですね!」

「そうだね。」

「一緒に学校行きましょうよ!」

「あ、うん。」

彩乃は綺麗に微笑み、ことりの隣に並んだ。


「森山先輩って、好きな人いないんですか?」

「な、何?急に...。」

「なんとなく。」


じ、と彩乃に見られてたじろいだ。

何処となく楓と似ていて、少しだけ気まずい。


「気になる人もいないんですか?」

「いないよ!」


否定した後で、頭の中に郁の姿が思い浮かんだのはきっと気のせいだと思う。