「う……」

雪は頭痛を感じてむくりと起き上った。
いつの間にか布団に寝かされている。
どうしてこんなところに?まったく覚えていない。
私は修学旅行に来ていたはずで……。
途中で気絶でもするようなことがあった?
でも病院ともホテルとも違うようだし……。

「あ、お姉ちゃん……目が覚めましたか」

ふすまから男の子が食べやすく切られた果物のようなものを持って入ってきた。
かわいらしい子供だ。
顔立ちは日本人なのに、赤みのかかった栗毛で瞳は金色だった。

「あなたは……だれ?」

「ぼ、僕は慈恩……といいます。あの、のど乾いてませんか?これ……食べてください。」

「これ、なに?」

「僕の家の庭でとれる果物です。名前までは、わ、わからないです……ごめんなさい」

よく熟れておいしそうな、見たこともないような果物だ。
雪はそっと果物に手を伸ばして一口かじってみた。