「失礼する」

その声と共に戸が開いた。
金髪に銀色の瞳、狐の耳としっぽ、そして着物。
アンバランスかと思いきや、そんなことはなく、かっこいい人だった。
歳は18歳くらいに見える。

「お兄」

慈恩がぱっと立ち上がる。

「え、あの時の?」

雪は不安そうに男を見上げた。

「慈雨だ。調子は、もういいのか?」

「はい……」

「そうか」

「……」

会話が止まってしまった。
何を話せばいいのかはわからない。

「えっと……お兄、お姉ちゃん、僕は席を外すね。それじゃあ」

慈恩は苦笑して出ていってしまった。
ますます空気が重くなっているように感じる。

「あの、慈雨さん」

「なにか?」

「私じゃないと、駄目なんですか?」

200歳と15歳はどう考えても不釣り合いな感じがするのですが。

「お前がいい」

「う……ど、どうしてですか?」

正直、顔がいい人に、まじめな顔でそんなことをを言われたらひるみます。
別にこの人と結婚したっていいんじゃないかとも思ってしまう。

「竜藤、雪だったな、名前」

「はい」

「見てみたいんだ。お前の霊力は、不思議だから」

「へ?不思議ですか?」

高貴とか純粋とか、そんな感じには言われてたけど、不思議といわれるとは思わなかった。

「お前は透明なんだな。それか、鏡のようだ。自己、というのが見当たらない」