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あの時、話していたのは全てが本当の話ではない。


あたしは臆病者だ。

そして、とても弱い。


だから、自分を守る為に嘘をつくのかもしれない。






「千春さん、失礼します」


「…あ、はい」



話が終わったのか、沖田さんが部屋に戻ってきた。


もう、あたし…殺されるんだよね。


怖くないわ。

きっと。


沖田さんは静かに部屋へ入ってくると、あたしの目の前に腰を下ろした。



「千春さん」


「……はい」


「甘味、食べに行きましょうか」


「………………はい?」



すごく、すごーく真面目な表情をしていた沖田さんが、いつものようににっこりと笑う。


え、何?

どういうこと?


あたし…殺されるんじゃなかったの?