『そろそろ公民館に向かいましょう。清志さんが寂しがるわ』

居間に響いたその声で、全員の腰が上がった

『そうだな、あいつも酒が飲みたくなってる頃だ』

親戚一同が身だしなみを整えてる中、叔父さんだけはまだ腰を上げていなかった

コップに残った僅かなビールを見つめ、寂しげにそれを飲み干していた


親父のお通夜は夕方6時から近くの公民館で行われる

うちの家は昔ながらの一軒家で無駄に広く、余裕でお通夜、葬儀が自宅で出来る程だった


だけど親父の交流関係は広く、この町の組合町(くみあいちょう)をやっていた事から沢山の人が参列してくれる事が見込まれていた


自宅から公民館までは5分の距離、居間であんなに騒いでいた親戚達は何故かその間一言も喋らなかった

顔を真っ赤にした叔父さんもネクタイをきっちりとして歩いていた


公民館に着くと、お通夜特有の飾り付けがされていて、“瀬戸家”と書かれたちょうちんが飾られていた


瀬戸清志、それが親父の名前