ケータイ小説 野いちご

月と太陽の事件簿16/さようならの向こう側

もうひとりの送り主

翌日。

昼食を終えたあたしは松葉杖を手にとった。

また、屋上へ行こうと思ったのだ。

いや、正確に言うと、多江さんに会いに行こうと思ったと言うべきか。

だいぶ体に馴染んできた松葉杖をついて、よっこいしょと屋上に向かおうとした時。

外からパラパラという音が聞こえたかと思うと、雨が降り出したのだ。

これじゃ屋上へは行けない。

どうしようかと迷った挙げ句、多江さんの病室に直接行ってみようという結論に至った。

しかしあたしは多江さんの病室を知らない。

どうしたものかと思いつつ病室を出ると向こう側から高森さんがやって来るのが見えた。

「高森さん」

「どうしたの旭さん」

あたしは多江さんの病室はどこかと訊いた。

「雪村さんの病室…」

高森さんは少し困ったような表情をみせた。

「別に旭さんに隠す必要はないんだけど…」

もごもごと言葉を濁すような素振りの高森さん。

やはり婦長さんに怒られちゃったりしたんだろうか。


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