「あ゙〜、暇。暇過ぎる。」
 屋上でパタパタとうちわで風を送る少年が一人。彼の名は松岡謙弥(まつおかけんや)。身長一八〇後半とかなり大柄だ。
「五月蝿い。それ言うのもう10回目だし。」
 建物の影で分厚いハードカバーの本を読む少年が一人。彼は松岡慎弥(まつおかしんや)。身長は謙弥同様一八〇後半だ。
「同じ事言い過ぎだよ。糞餓鬼。学習しないと。」
 ペラッと次のページを捲りつつ、横目で謙弥を見た。相変わらず暑そうだった。
「うるせー。糞餓鬼って年さほど変わんない奴に言われてもなー。てか、時間差で慎弥が早かっただけだろー?誕生日一緒だし?変わんないよ。って事で関係無し。はい、おしまいっと。」
 終了の合図という意味でパンッと一度手を叩いた。
「あっそ。別に良いけど。事実だし。」
 ページを捲り、本の最初のページに挟んであった栞を抜き取った。そして今開いているページに挟み、パタンと本を閉じた。
「……にゃろう。」
「そろそろ行くよ。昼休み終わっちゃう。」
 謙弥を一度横目で見つつ、颯爽と屋上を後にする。
「あ、待てよ!」
 食べ終わった弁当を持ち、慎弥の後を追いかけた。