……



 一目、ヤツを見たとたん。



 僕は、その場に、凍りついた。



 ………



 そいつに、自分と同じ空気を感じたんだ。



『同性愛者』の方じゃない。



 僕の捨てた、過去の方。



 暴力と、血の匂いのする、闇の世界の住人だと、僕の本能が、警告する。



 目の前に、居る、初対面の男は、危険だ。



 結花の彼氏と紹介されて。



 推して測れば、子供の父親らしい。



 表面上は、いかにも、結花が好みそうな。



 陽気で、気さくな男だけども。



 ……そんな『皮』から滲み出る、迫力が、半端じゃなかった。



 別に、戦う相手じゃないはずなのに。


 しかも。



 今までかなり。



 暴力の修羅場をくぐり抜けて来たはずなのに。



 そこに居るだけで『怖い』と思う男に出会ったのは。



 後にも先にも、これが初めてだった。