ケータイ小説 野いちご

重なる平行線

ずれる日常
後遺症

部屋の扉を開け、電気を点ける。

眩い光に目を細めながら、上着を脱ぐ。
制服のブラウスを脱ごうとして、

そして、見てしまう。
    腕
 傷、
  …痣。
二日前のだ。

露になった左腕の肌。殴られてついた。
青を通り越して茶色と黒の混ざったような変な色の痣。

「あーあ」

…見ちゃった。

駄目なのに。

認識しちゃあ、駄目なのに。

背中が痛くなる。
怪我があることを思い出して、痛くなる。

痛い。いたい。イタイ。
…痛くない。
痛く、ない。
痛くないから、大丈夫。
大丈夫だから。


背中を壁に預けて、ずるずるとへたりこむ。
ぎゅ、と右手で肩を掴む。
逸らさないと。
逸らさないと。

少なくとも、今はまだ。
まだ、でないで。

「ッふ、は、ぁ、はぁッ」

呼吸ができない。

吸わないと。
続けないと。

生きること、続けないと。


「は、ぁッ、」
口を開けて、酸素を求める。
「―ッひっ、う、ぅゔゔ」
吸いすぎて、景色が白く滲む。

駄目だ、だめだ

駄目だダメだだめだ。
だめだ

口を塞ぐ。
手で押さえる。


声聞かれちゃ駄目
駄目だから、


アイツラニ、キカレチャダメダカラ。


―アイツラ?



あぁ、そうだ。

…死んだんだ、あの人達。
殴ってくる人は、もういないんだ。
誰かが殺したんだっけ?誰だろう殺した人。誰でもいいけど。
案外、私だったりするのだろうか。
…そうかもしれないね。



もういい。
もう、いいよ。

…どうでもいいから。


涙は出ない。
悲しまないし、喜ぶわけでもない。
嬉しくも哀しくもない。
あるのは、脱力感。

学校は忌引きとかでしばらくは休んでいいだろう。

床に体を預けて、視界を閉ざす。
冷たい感覚が心地よい。
部屋の電気は、暴れた時に消してしまったらしい。

背につく床の冷たさと虚無感に意識を預ける。

もう、動きたくない。
休みたい。

私が今願うこと。

少しだけで良い。
…お願いだから、


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