葬式はいつの間にか終わっていた。

いつの間に、と言っても式には参加しなかったわけではない。

記憶が朧気なだけ。

学校の先生やクラスメートには式への参加を辞退してもらった。
来ても素っ気ない態度しか出来なかったろうし。

一番面倒だったのはマスコミ関係の方々だ。
そういえば我が鈴原一家、お昼のにゅーすに許可なく話題になる程有名になってたんだっけ。
すっかり忘れていた。富美子さんに送ってもらえて助かった。

集まった親戚に対して一言ずつ何かを言った筈だけど、それすらも曖昧で口だけが動いていたんだろうと推測。

裕一君とは色々話した…気がする。
一緒に暮らすという話は出なかったのは明確に記憶している。

葬式は線香と花の香の中で厳かに行われた。

その状況説明だけが私が葬式に対して感じたものだった。

相変わらず薄情な娘である。


生前の父親を写した写真に手向けの言葉を贈ったところ、そこから先の私の記憶はさらに薄れて、思い出す気力もない。

帰りは裕一君に送ってもらえて、今は自宅。

リビングで一人、部屋の中央で座っていた。

ぼうっと、壁の上に何かを探している。

体が妙にだるかった。