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** 戒Side **



まったく、無防備なお姫様だ。


俺の腕の中で眠る朔羅を、俺は愛おしそうに見つめ、そして額にそっと口付けを落とす。


朔羅は胸の中に白いあざらし…マクラをぎゅっと抱きしめると幸せそうに口元を緩めた。


俺は朔羅の幸せそうで、可愛い寝顔を眺めてちょっと後ろめたい気持ちを覚える。




朔羅はキャンサーセンターの話を、信じたようだ。




俺が話した大部分の話は俺の仮定だが、事実だ。


ただ、キャンサーセンターについては



嘘。




素直な朔羅。


そこがまたこいつのいいところでもあり、可愛いところでもあるんだけど。


ただ、まだ事実を教えるわけにはいかない。




朔羅を傷つかせたくはない。





響輔と綿密な打合せをしておいて良かったぜ。





―――

――


――**数時間前**――


「キャンサーセンターのことをお嬢に言う!?」


響輔の驚きが湯船に張った湯の表面に波紋を呼んだ。


二人で肩を並べて湯船に浸かるなんざ何年ぶりだろう。


男二人で風呂に入るなんて、ぜってぇ嫌だったけど、致し方ない。



朔羅がどこで聞き耳立てているか分かったもんじゃないし、この場所が一番安全だと踏んだわけだ。