昔、遠い昔。
ノワール王国なる大国があった。

その国の城。
その城が見下ろす人が賑わう町。

一人の赤ん坊が生まれた。


「エルザ、よく頑張った」

一人の若い宝石加工の職人の元に生まれた子供。
妻は城に仕える小間使い。

生まれた女の子は二人の愛情を受けて育つ。

はずだった。



「じゃあしばらく留守にするが、よろしく頼むな」

「ええ、いってらっしゃい」


夫は仕事の都合上、町を出て、家を空けることになった。
別にそれは珍しいことではなく、妻はそれを笑顔で娘と共に見送った。


しかし、その姿が夫が最後に見た妻の姿。

次に会う時、彼女は変わり果てた無残な姿で夫を出迎えていた。