「そうなんだ……」

話をすべて聞き、シャーリィはシスターを見上げる。
しわくちゃな顔が優しくほほ笑みかける。


「これでこの話はおしまいよ」

「うん。ありがとうシスター。またお話聞かせてね」

まだ幼い彼女には、この話の血生臭さは理解できていないようだ。
それでも、シスターは優しくほほ笑み、彼女の頭をなでる。


「でも、どうしてシスターはこのお話知ってるの?」

「それはね……」
「シャーリィ!」

シスターが言葉を紡ぐより前に第三者が割り込んだ。
ふと見れば、扉の方に若い男が立っている。

帽子を目深にかぶり、ゴーグルで顔は隠れており、オイルのにおいを漂わせている。
その姿を見た瞬間、シャーリィの顔はぱぁっと輝く。


「パパッ! お仕事終わったの!?」

「……休憩中だ。それより、母さんが探してたぞ。早く家に帰りなさい」

笑顔で駆け寄るシャーリィをたしなめる父親。
その様子を遠くからシスターは見ている。

「あっ……ママにお買いもの連れてってもらう約束!」

「やっぱり忘れてた……。ほら、早くいきなさい」

「はぁ~い。……シスター、ばいばーいっ!」


父親が来てから、またシャーリィは騒がしく教会を出て行った。
教会に残っているのは父親とシスターの二人。

沈黙がその場の二人を包み込んだ。