「俺これ、隣に座ったほうがいいの?」

「あたしの隣が嫌じゃなければ」


そう言うと、彼はちょっと嫌そうな顔をして、でも隣に座ってくれた。

あたしも続いて彼の隣に座った。

ホールの椅子は、相変わらず安っぽかった。


足元にサブバッグを置いて、膝の上にリュックを置く。

公演の日は、荷物が増えるからちょっと嫌だ。


「ほんと、見に来てくれてありがとね」

「どういたしまして」


あたしがお礼を言うと、彼はぶっきらぼうに返した。


.