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第壱章・過去

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文久2年。

まだ新選組が壬生浪士組という名で、
京都の守護に当たっていた頃。

その頃、私は京の民に歌うことを強いられていた。
なんでも私の歌は特別な力があり、私の歌を聞くだけで、
賭け事に強くなり、体力や治癒力が桁違いに上がるのだとか。
その為に、私は両親を亡くし、
長州の輩が血眼になって私を探していたり、
幕府の公家には保護という名の捕縛を受けたりしていた。

自分がどうなっても良かった。歌うことは好きだから、
構わないと。

でも勝手に歌を辞めれば、暴力と罵声の嵐だった。

疲れるのはそこだけ。

そんな日々から救ってくれたのが、壬生浪士組だった。

彼等は私を匿ってくれた。


壬生浪士組は優しい方も居たけれど、
権力を利用して、私の力を狙う者もいた。
正直言えば最初は信用出来なかった。
でも近藤様や土方様達は違った。

「珠姫君。おはよう。昨夜はよく眠れたかい?」

襖を開けて入ってきたのは、近藤勇。
近藤様はそうやって何時も私の体調を気遣ってくれた。
近藤様は、壬生浪士組の局長の1人で、
もう1人、私の苦手な芹沢鴨様という局長が居る。

近藤様とは違い、芹沢様は私の力が欲しいらしく、
会う度に歌を聞かせろと言われる。
答えなかったり、逆らったりすれば、
芹沢様はお気に入りの鉄扇で思いきり私を叩く。
それが非常に痛く、辛いものだ。
仕方なく歌うしか私には選択肢が無い。

「昨夜、芹沢局長が来ただろ?
歌っていたし、歌の質が違った。」

ガラリと襖を開けて来たのは、土方歳三。
彼もよく私を心配してくださる方だ。

「えぇ…よくご存知ですね?」

珠姫が純粋な問いかけをすると、
土方は頬を染め、視線をずらし答える。

「仕事をしていたからな…丁度聞こえてきたのだが、
なんだか悲しそうに聞こえたからな…」

彼は頭が良い上に、洞察力も優れている。