当然のごとく、相手がそれを待つ訳もない。

 ギャラルは雄叫びを上げるとシレアを仕留めるべく、鋭い爪と牙を剥いて襲ってきた。

 けれども獣の攻撃が届く前に詠唱は終わり、シレアの頭ほどもある炎が宙に出現し真っ直ぐギャラルに向かってゆく。

 火弾(ファイアボール)はふらつくことなく獣をめがけて飛んでゆくが、当然のように難なく避けられてしまう。

 再び獲物を捕らえるために向き直ったギャラルの眼前に、剣を構えたシレアの姿が──獣がそれに気づいときにはすでに遅く、青年はその切っ先を大きな口に突き入れた。

 ギャラルは驚きと痛みに暴れて叫びを上げる。

 しかし、ここで力を緩めれば手負いの獣の反撃に遭ってしまう。