「どうぞ、幸せなホワイトデーを…」

笑顔を忘れず、お客様に告げる

閉店間近で商品の整理をしていると、カウンターに影ができる

「いらっしゃいませ」

そう言って、頭を下げた

「すみません。ホワイトデーの贈り物…」

聞いたことのある声に顔をあげる

客もビックリしたのか絶句している

「ホワイトデーの贈り物ですね。どのようなものがよろしいですか?」

私は普段通りに笑顔で話しかける

「あぁ、店員さんのお勧めは?」

「一番の売れ筋は、甘さ控えめのこちらのチョコです。女の子は…」

1番売れてる商品を教えた

「店員さんのお勧めは?」

私は躊躇いがちに答えた

「私はバームクーヘンをお勧めします。私が好きなだけですけど…」

嬉しそうに微笑む客と話続ける

「じゃぁ、バームクーヘンをプレゼント包装で」

「かしこまりました。どんな方に贈られるんですか?」

「寂しがりだけど強がる女」

照れ臭そうに言う客に私の心は痛む

「とても可愛い方なんですね」

すると、客は笑顔で

「彼女じゃないんですけど、大切な人なんです」

私の表情はひきつっていたかもしれない

包装し終り、笑顔を作り、袋を渡しながら

すると、客はその袋を私に突き出し…

「凉花の為に買ったんだ。仕事が終わったら連絡よこせ!」

唖然とした私は呟くしかなかった

「ズルいよ…」