朝はダージリンティーと決めている。

水無瀬 遥は少し早目に登校して、天神学園の学食で愛用のティーカップとソーサーで紅茶の香りを楽しみながら、下々の生徒達が学園へと向かってくる様子を窓から眺めている。

「皇帝、おはようございます」

下級生の朝の挨拶に。

「ん」

目を閉じ、返事だけを返す。

「流石皇帝だな、紅茶の時間を優先だよ。挨拶されても視線すら交わさないなんて」

遥の姿を見かけた生徒がヒソヒソという。

「それを許されるのは皇帝だけだよね。『無視された』と思わせない優雅さと気品があるって言うか」

「格の違いを見せ付けられるよなぁ。見ろよ、あの穏やかでいて威厳に満ちた物腰。やっぱり上に立つ者は違うよなぁ」

誰もがその存在に一目置いている。

それが水無瀬 遥。

天神学園の皇帝と呼ばれる男だった。