あたしがその事を彼氏に打ち明けたのは、6月の長引く梅雨の最中だった。


「大我(たいが)。大事な話があるんだ」


ものすごく緊張しながら、勇気を振りしぼった。


大我を信頼していたし、こんな事くらいでダメになるようなことはないと思っていたから。


「大事な話?」


大我はベッドから気怠そうに抜け出して、


「なに?」


とキャラメルブラウン色のやわらかい髪の毛をくしゃくしゃ掻きながら、ベッドサイドのテーブルに手を伸ばし、


「めちゃくちゃ喉渇いた」


ペットボトルの水を飲んだ。


体を重ねた直後の彼の背中に告げた。


「あたし、沖縄に行くの。夏休みに入ったらすぐ」


「へえ。そうなんだ」


ペットボトルをテーブルに戻して、大我が笑った。


「旅行? 家族で行くの? お土産よろしく。沖縄っつったらあれだろ、ちんすこう?」


あたしは気怠い体を起こして、大我の背中に頬を寄せた。


「あ、紅芋タルト。オレ、ちんすこうよかそっちのがいい」


密着した頬に大我の鼓動が触れて、染み込んでくる。


「大我……」


あたしは、本当に、大我を好きだった。


背が高くて、お洒落で、かっこよくて。


おいしそうなキャラメル色の猫毛のようなふわふわの、無造作な髪の毛も。


耳にさり気なく輝くシルバーピアスも。


笑うと垂れる、つり上がった奥二重の目も。


ミッドナイトブルー色のカラーコンタクトも。


体を重ねたあと必ずしてくれる、ついばむようなキスも。


大我は初恋の人で、初めての彼氏だった。


「あのね、大我」


あたしたち、距離になんか負けないよね。


大丈夫だよね。


「何だよ。今日の陽妃はやけに甘えてくるんだな」


その低くて、高校生とは思えないくらい妙に色気たっぷりの声も。


大好きだった。