月が痩せ細ったように消え入りそうで、

今にも闇に溶けてしまいそうな、そんな夜。

月の淡い光を嘲笑うかのように

街全体がピカピカと下品に光っている。

ここは新宿歌舞伎町。

ホストとキャバ嬢の通り。

シンプルさの似合ない、派手な空気が漂う。

その風景の一部に、俺は居る。

隣には、この派手できらびやかな街でも目立つ女。

頭から足の爪先まで、軽く1000万はいってそうなコーディネート。

金融企業の社長令嬢らしい。

「圭吾(ケイゴ)〜?」

「何?」

「まだ一緒に居たい」

上目使いで、誘惑してるつもりのお客さんの彼女に苦笑いする。

「明日、お店で待ってる」

がっかりしたように眉間にシワを寄せる彼女は、やっと俺から離れた。

「また明日」

綺麗に笑顔を作る彼女はやっぱり、"いい女"だと思った。

「また明日」

俺も、出来るだけ優しい笑顔を作って、軽くお辞儀をした。

彼女の背中が霞んで見えなくなるのを見届けてから

俺も店に戻った。