すると灰色髪不良が染めなくて良いと二人に言い放つ。


目を削ぐ二人に、


「あん等が真面目にならなくても」


真面目そうな奴を捕まえて利用すればいいじゃないか、得意気な顔で笑った。




「例えば、そこで盗み聞きしてる奴とかな」




………。

あ、いっけねぇ、俺、こーんなところで何してるんだろう。

授業に行かないとな、授業に。
前橋、もう教室にいるかなぁ。

冷汗、滝汗、何汗を流しながら俺はくるっと踵返して、そそくさと階段に足を向ける。


ドン―ッ、何かにぶつかって俺は足を止めた。

壁じゃないよな…、今の。柔らかいってカンジでもなかったけど、壁みたいに超硬いってカンジでもなかったし。

 
恐る恐る視線を上げれば、いつの間にか灰色髪不良さまがしたり顔で俺を見ていた。
 

ドッドッド、緊張と不安と恐怖で心臓が早鐘のように鳴り始める。


や、や、やっべぇ…、どうしよう…、本物の田山圭太っ、大ピンチなんだけど。

まさか本物の田山圭太が盗み聞きしていたなんてっ、向こうにとってはチャンス到来だって思ってるんだろうなぁ。

此処には俺の武器であるチャリもないし、土地勘なんて此処じゃ使い物にならないし…、お得意の習字? 習字伝説でこの場を乗り切ってみるか?


背後に感じる二つの気配に生唾を飲みながら、俺は内心大パニックでどうしよう節を連呼。

マジでどうする、どうすればこの場を乗り切る事がっ。


「これくらいのナリだったら荒川の舎弟に仕立て上げられるな。渚、千草、こいつを利用するぞ」


どうすれば…、って、あっれー…、俺、荒川の舎弟に仕立て上げられる?

じゃあ俺はだあれ?
田山圭太ってどなた?
荒川の舎弟って何者?

ついでに此処はどこ?
此処はお学校ですよねー?


んでもって俺は田山圭太ですよねー? あれ、あれれれ?