翌日の昼頃。
夜月は朱里の携帯に電話を掛ける。



「今夜、暇か?」



「うん…」



「食事に付き合わないか?」



「いいよ」



「何時に仕事終わる?直接そっちに迎えに行くから」



「えっと…今日は六時かな」



「じゃその頃に行くから」



夜七時過ぎに夜月と朱里は
少し前にテレビや雑誌でも紹介されたばかりで評判のレストランにやって来た。



「予約した…」



「七時に御予約の高西様ですね。お待ちしていました。御席の方に御案内致します」



店の店員が笑顔で接客する。
高西という名前を聞いて
朱里は不思議そうな顔をした。



なぜなら朱里は夜月の本名を
知らなかったからだ。
初対面の時も高西康平ではなく
夜月と名乗っている。



今、高西と聞いて朱里は
苗字が高西で名前が夜月なのかと思ったに違いないだろう。



席に案内されて座った二人は
メニューを見ていたが
朱里は何を注文していいか迷ったので
夜月に任せる事にした。