今、俺の目の前には一人の男が立っている。俺はこの男を倒すために、大きな犠牲を払いつつここまで旅をして来たのだ。
重苦しい空気が漂う広間にその男の声が響く。

『ようやく来たか、力無き者よ。非力ながらここまで来たことは称賛に値するぞ?』
「黙れ!尽きる事の無い貴様の欲の為に一体どれだけの人が死んだのだ!俺は忘れない…あの日俺の腕の中で冷たくなっていった子供の顔を!」
俺の怒声がこだまする。

実はこの男と対峙したのは今が初めてでは無い。寧ろこの男の事はよく知っている。
俺達は戦災孤児で同じ施設で育てられたのだ。
お互い似た境遇故仲良くなるのは早かった。が、ある事件を境に奴は俺の前から姿を消した…

『たまには懐かしい話でもするか?』
「うるさい!貴様に殺された先生の、ツトムの、ミカの仇を今日こそ討つ!」

―そう、施設の教師生徒全て殺されたのだ…

『成程、ここへは昔話をしに来た訳では無い…か…ならば貴様の望み通り戦ってくれよう!出よ…闇の底にうごめく悪鬼ども…我が呼び声に応えよ!』

奴が悪魔を呼び出す。ならば!

「我が主の名の許に命ず…光よ、戦士となりて我を護りたまえ!」
光が降り注ぎ、中より翼の生えた美しい戦士が現れる。
「呼び出す事が出来るのは貴様の専売特許じゃないぞ!ドミニオンよ、主が名の許、魔を討ち滅ぼせ!」

『フッ…面白い、面白いぞ!だがそれだけで俺に勝てるのかぁぁっ!さぁ往け!魔物どもよ、思うがままに喰らい尽せ!』



最後の戦いが始まる…