桜がもうすぐ咲こうかという,4月の心地よい風の吹くある日,僕達栄町小学校4年2組に転入生がやって来た。


『さあ!皆,今日から皆と一緒に勉強する 木村 香織さんです。

皆仲良くする様に。』


と担任の末沢先生が、大声で言った。


彼女は、恥ずかしそうに小さな声で挨拶をすませ、空いている僕の隣りの席に座る様にと先生が言ったのを背中で聞きながらこっちに向かって来た。


なんとなくその時のはにかんだ顔が僕を引き付けて,これからの長い付き合いをもう既に暗示していた。


気のせいかもしれない。


ただ言える事は,僕と木村香織はこれからの9年間,お互いにいろんな道の上を歩いてきて、その道が交わったり離れたり重なったりして生きてきたと言う事実を,忘れるわけにはいかないだろう。


『僕の名前は 森川 浩志。

判らん事が有ったらいつでもきいてな。

知らん事以外だったらなんでも知っとるから。

よろしくな。』


と,つまらないジョークで和まそうと努力したが,行き成り,手で頭にツッコミを入れられた。


なんと,彼女は関西から来た子で,先ほどのはにかみは何処へやら,メチャメチャおもろい女の子だった。


『うちな!大阪の堺市から来たんや。

おと-ちゃん警察官でメチャメチャ怖いんよ。

つまらんジョーク言うとったら逮捕してもらうで!』


転入初日とは思えないくらい元気で,僕は圧倒されっぱなしでした。

なんでも彼女の父は,大阪では捜査4課にいたらしく,移動で香川に移ってきたらしいのだが,柔道3段・空手4段・剣道3段の合わせて10段の猛者らしい。