りいの話を聞くうちに、保憲の顔が強張ってきた。

「なんだと…!藤原様の姫君が…!?」

 聡い彼はすぐにことの重大さを理解したようである。


 青ざめた保憲とは対称的に、晴明の表情は飄々としたものだ。

 特になんの反応も示すことなく話を聞いている。

「…晴明、お前…」

 保憲が眉をひそめた。

 それを見て、晴明は慌てて首を振る。

「違いますって。さすがにこんな深刻な事態にまで怠けようとか思いませんよ」

 にこり、と艶やかな笑みを浮かべる晴明。

 話している内容も忘れる笑みだ。だがその表情のままで驚くべきことを言う。

「ただ…知ってましたから」


「え…?」

 声をあげたのはりいである。

 超子の口振りからして、詮子と晴明は面識がないはずだが…

 それに、知っていたならなぜそんな大切なことを黙っていたのか。

「…お前、どうしてそれを?」

 りいは首をかしげた。

「うん、まあ色々情報がね」

 晴明は適当にはぐらかし、続ける。

「でも…あの子には危険はないよ」

 その、あまりに自信たっぷりな声を、りいは訝しむ。

「だから…なぜ、そう言えるんだ」

 保憲も黙って頷いていた。


「えっと…」

 その問いに、晴明が珍しく困り顔をしたとき。





「…わたしから説明しよう」

 突然、部屋の隅から聞き慣れぬ声がした。