①司郎・富士子の場合


 この2人は祖母の弟夫婦にあたり、笹生家から目と鼻の間に住んでいる。
 司郎は祖母と対等に話せる唯一の存在で、また、私にとっては距離的に父親のような存在だった。よく年頃の娘は父を嫌い避けるというが、私も小学校高学年の頃、司郎に「そろそろ胸が大きくなってきたんじゃないか?見せてみろ」と度々からかわれた事があり、いつしか彼を避けるようになった。
 一方、司郎の妻・富士子は目的を果たすためなら相手の事などおかまいなしの所があり、その昔、「図書券をあげる」と直接渡すのにこだわって、入浴中に浴室の扉を強く揺すられた経験がある。
 その際、彼女との接触を恐れ私が風呂場へ逃げ込んだのは、実はそれ以前に畑の一角で排泄する姿を彼女に見られた事があるからで、誰しもそういった経験があれば顔を合わせたくないと思うのが普通だろう。
 また、彼女が我が家の破けてボロボロになった障子を見て「忍ちゃんは不登校だったから、頭がおかしくなって自分で破いたんじゃないか?」と、周囲に言いふらしていたと耳にした時は、それまで「心配してる」だ何だと善人ぶってた大人達が全て偽善者に思え、そんな彼らに会うのが嫌で、ますます家に閉じこもるようになるのであった。
 ちなみに、障子が破けた本当の理由は、

 ・全部を糊付けせず、四方のみガムテープで固定していた事。
 ・そのため風に弱く、剥がれたり亀裂が出来た所に猫が飛びのり、穴が広がった事。
 ・そのまま何年も張り替えずにいた事。

 …この3点が理由である。