先に食べ終えた彼が、他に誰かと話す訳にもいかず携帯をいじる訳にもいかず
といった様子でぼーっと私の手元を見ている。
 それに気づいた瞬間、私はお弁当用ミートスパに伸びた箸を
卵焼きに移動させた。
 ビニール袋が重なる音が耳に響く。
 彼は「捨ててくるわ」と言い席を立った。
 慌ててミートスパを口の中にかけこんで、鞄の外ポケットから
ティッシュを取り出し口の周りをごしごしとこする。
彼は他の男子にちょっかいを出されていてこちらを見ていない。
 その隙にミートの色に染まったティッシュをお弁当入れに放り込む。

「もう、何やねんお前ら・・・・・・あ、食べ終わった?」
 うん、と言いながら慌ててお弁当箱を鞄に入れさりげなく口を拭く。
「じゃあ一緒に図書室行こうか」
 ん?
「いや、先に行ってていいよ」
 次の時間は体育だ。それに備えて横モレ防止で長時間用のアレに変えなければならない。しかし今から図書室に行って仕事をしてはその重要な時間が危うくなるので。
「俺先行くん? なんで?」
 流せよ!! 疑問に思っても流せよ。
「えっと、今日のいいともに好きなゲストが出るねん。
それワンセグで見てから行きたいなって」
「誰? あ、天海祐希?」
「違う。そんな演技の幅が狭い人じゃない。
大好きやけどね。BOSS毎週見てるけどね」
「誰?」
 えーと。
「大泉洋」
「出る? なんも映画とかドラマとか出てなくない?」
「サンテレビでは毎週土曜日水曜どうでしょうやってるし1×8いこうよも
おにぎりあたためますかもやってる」
「サンテレビだけで3つレギュラー持ってるん? 大泉洋」
「そう、大泉洋」
「ふーん。まあ早く来てよ」
「うん」

 ありがとう大泉洋。
 本当に私は貴方の事が大好きです。

 その後私はトイレで肝心の用を済ませ、体育の準備をしてから
なんとなくワンセグでいいともをつけた。
ユースケ・サンタマリアが出てた。

まあ、嫌いじゃない。