「お金がない」
そんな反論出来ない理由で初デートは彼の部屋。

 電車で三駅、一軒家。
両親不在で二人きり。
挨拶をして、彼について階段を上がる。
不自然に積み重ねられた机の上のプリント、
普段は使っていないであろう座布団が無造作に置かれた床、
妙にぴっちりと整えられたベット、
物を詰め込みすぎてちょっとドアが開いているクローゼット、
そして「あ、適当に座って」
と緊張しか面持ちで言う彼。


 彼はそわそわ。私もそわそわ。
彼はどう思っているのだろう。
「今日はどこまで出来るのか」
「親は何時に帰ってくるのか」
「何を喋ればいいのか」

 しかし私が考えていることは
「生理用品を変えるときはどうすええばいいのか」
「もし座布団を汚した場合、どう対応すればいいのか」

 心配事が多すぎて、どうしても笑顔がぎこちなくなる。
彼の普段着、彼の寝癖のついた髪、
棚に並んでいる彼好みのCD、
興味惹く物たくさんあるのに、
どうしても百パーセントで楽しめない。
「何か飲み物持ってくるわ」
 彼は立ち上がる。
「うん、ありがとう」
そう言いながら座布団の上からそっとお尻を浮かして確かめる。
うん、汚れていない。