「降ろして。重いんでしょ?」


「やだなあ。あれは由美を早く帰すために言ったんですよ」


徹也は春田をそっと降ろしながらそう言い、春田と向き合った。


「足、つねる事ないでしょ? 痣になったらどうしてくれるの?」


「だって、先生が喋ろうとするから…」


「最初の1回で分かったわよ。後の2回はつねらなくてもよかったのに…」


「すみません…」


「私の事、酔っ払いとか、頭が悪いとか、ひどいじゃない…」


「ごめんなさい」


「帰る」


「え?」


「私、やっぱり帰る!」


春田はクルッと徹也に背中を向けた。
ちょっと拗ねてみただけなのだが、だんだんと引っ込みがつかなくなってしまった。