私の心臓は
ガラスでできている。


なーんて、

ウソ。


だけど半分は本当。



ひとつ、

ふたつ、

みっつ、、、

色とりどりの薬を掌にのせて
一気に口に放り込んだ。


「柚希ー、遅れるわよー」


キッチンから顔を出した
ママの言葉に答える代わりに、

期待と不安の入り混じった気持ちも
コップの水で一気に流し込む。


「うん、似合う!
 かわいいじゃない!」


嬉しそうに言うママとは対照的に、
少し厳かな気持ちで
真新しい制服に袖を通した。

本来ならば
入学式に味わうはずの
緊張感、ワクワク感、高揚感。


私はと言うと…

1カ月遅れの初登校。

あたたかい風が
優しく通りすぎていく5月。

夢にまで見た
『高校デビュー』の日だった。