「お嬢様遅かったですね…どうなさったのです?」



意味ありげな笑み。

全部見透かしているような笑み。


……知ってるくせに。

まったく、確信犯な執事だわ。



「二度寝してしまっただけよ」



何もなかったように言ってはみるけど、本当は違う。


どうしても一人でリボンを結ぶことができないのだ。

学校の女の子たちは、大きなリボンを器用に見本用の物みたいに結んでいる。



私はそれがどうしてもできない。

小さな頃から、身の回りのことは誰かがやってくれたから。



「リボンが曲がっていますよ」



零はそうわざわざ耳元で囁くと同時に、すっと手際よく直してくれた。

やっぱり、私は零がいなくては何もできないんだ。



「……やってなんて言ってないけど」