ヴァンパイアの午睡



彼は本を読んでいた
窓のカーテンが揺れ
ビロードのワイン色のソファに
寄り掛かり

彼の美しさは
あまり知られてはいない
自分の運命を呪って
この屋敷に閉じ籠るから

なぜ僕が此処にいるかも
誰も知らない
僕は自分で決めたのだ
暗い路地裏の石畳で
血まみれのあなたと出逢い
恐れもなくあなたに願った
僕を哀れと思うなら
あなたの力で僕を捉えてと
みなしごの孤独から逃れるために
永遠の生を求めたのだ

だが彼は言う
私が一緒にいよう
君から死を奪わないようにね
私は君を愛するから…

彼は知っている
死の優しさを
失って初めて
理解するそれを

彼はヴァンパイア
人の生き血を吸わぬ吸血鬼
なぜ?
と聞くと彼は言う
誰かの生き血を吸うのは
誰も人も変わらないのだよ…と
私は君を独りにしないさ

愛したからね

魂は愛の中で永遠だと知ったから
君が死ぬまでなんとか生きて
(動物の血でも吸ってね)
君を看取ったら私も死ぬ
血に飢えて死ぬんだ
ヴァンパイアらしいだろ

僕を襲わないように
夜に微睡むあなた
本が手から滑り落ち…
僕は薄い毛布を
あなたの肩まで掛けてあげる