<ドンッ!バンッ!>

壁か何かを殴る音がした。
そして少し鈍い音がした。
同時に左肩に激痛が走った。

「はぁ…はぁ。」

そうだ…喧嘩の末、お父さんに殴られたんだ…私。

「お父さんのそういうとこ、大っ嫌い!!」
「だからなんだ!!」
「なんでも…っはぁ…はぁ。暴力で…はぁ…解決…しないっ!!」

力の限り怒鳴った。
今までも何度か軽い過呼吸はあったけど、今日は少しいつもと違った。
ピリピリと手足が痺れて、立っていられなくなった。
目は開けられなくて、頭は割れるように痛くて、息がすごく苦しい。
お母さんが必死に応急処置をしてくれた。
でも、苦しくて…。
この程度の過呼吸で、死なないのは分かってた。
でも、死ぬかと思った。
"助けて"心の中で必死に叫んだ。
気がつくと、病院だった。
あっという間の出来事だった。

「もう、大丈夫だよ。」

お母さんが、手を握ってくれてた。
私は1時間以上過呼吸が続いたので、病院に運ばれたらしい。
ふと、お父さんとの事を思い出し、もう冷静ではいられなかった。

「もう嫌!死にたい!!」
「何言ってるの!!」
「殺して…。」
「そんなの駄目よ…。」

雨の中病院を飛び出して、必死にお母さんに止められたのを覚えている。
でもその後はよく覚えていなくて…結局は家に帰ってた。

「先生…。」
ずっとそう呟いてた。

<トントン>
「…こんばんは。」

懐かしいスーツにネクタイ。
なんだか…落ち着く。

「先…生?」
「君のお母さんから、連絡を受けて来た。…遅くなってごめん。」

先生が…来てくれた。
どうして?なんで来てくれたの?

また悲しそうな顔。
でも先生の瞳に映る私は、もっと酷い顔。

「先生、びしょびしょじゃないですか…。」
「ちょっと冷ための、天然シャワー浴びてきたから!笑」