「やばい…。吐きそう。」

うずくまって、手で顔を覆う先生。

「先生…大丈夫ですか?」
「頑張る。大丈夫…。行こう。」


そう。今日は挨拶の日。
私の親に、正式に付き合いますって報告っていうのかな…。

「こんばんは。中川と申します。」

先生が深くお辞儀をして、お父さんとお母さんが軽くお辞儀をした。

「美佳がいつも、お世話になっています。」
「…さ!まぁそんな固くならず、まず何か飲みましょうよ。」

初めは雑談ばかり。
私も先生も緊張して、ほとんど料理には手をつけられない。

「それで…。」

お父さんが切り出した。
私と先生は目を合わせる。


「…3ヶ月という長い時間を頂き…先日、美佳さんとお話させて頂きました。美佳さんは本当に僕の理想で、だけどずっと考えていました。この子には未来があるという事。僕に出来なかった事も…この子には楽しんでほしいと思っていました。」

"うん。"と頷く、お父さんとお母さん。

「僕は言ってしまえば、もうおっさんです。進路も定まっていません。でも、それでもこの子は僕を選んでくれた。とても嬉しかったです。だから、この子が僕でいいと言ってくれるなら…。美佳さんと、付き合わせて頂きたいと思います。」

チラッと先生を見た。
横からみた先生はすごくぴしってしてて、だけど机に隠れた手をみると少し震えてた…。

「「…。よろしくお願いします。」」
お父さんとお母さんが、頭を下げた。
先生も頭を下げた後、私と先生は目を合わせてニコッてした。


「…じゃ、私達は先に帰るね。ちょっとお話して帰っておいで。」
しばらくして、取り残された私と先生。
…。

「…っ!!やばい!!」

そう言ってお刺身の葉や、冷めたポテトを食べだした先生。

「え…先生?」