先生が受けた、3つの法科大学院の試験結果が返ってきた。

お守りをギュッと握り締めた。
先生の試験の時に、もう何度もお願いしたけど…。
最後にもう1度だけ。
届いて…この願い。

「神様がいるならお願いです。一生に1度のお願いなんて、もう何度もしちゃったかもしんない。でも、どうかお願いです。先生の夢を…。どうか、叶えて下さい。」

先生…どこにも行っちゃわないで。
私、ここにいるよ?
俺いるからって言ってくれたよね?
他の人のとこ行かないでって言ったよね?
そう言った本人が、どっか行っちゃやだよ?

全部落ち着いたら、色んなとこ行こうって約束したよね?
帰ったりなんてしないよね?

受かってるよね?
これからも…一緒にいられるよね?

**

「こんにちは。」
「久しぶり。」

先生の家に行った時、いつも私が座らせてもらうとこ…。
いつも使うコップに、大好きなレモンティー。
先生が私にくれた、ウサギのお人形のスピーカーの色違い。
当たり前のようになっていく、だけどとっても"特別"な事。

「で、こないだそんでさ!」
「えーっ!笑」

人としてごく普通にする、人との会話。
だけでとっても幸せな事。
今こうして、何気なく誰かと同じ時を過ごしている事。
だけど、何より大切な宝物のような時間。

全てが愛おしく思えた。
あー、私幸せだって思った。

「…これ、見てみ?」

手渡されたのは、1通の茶色い封筒。
先生の受けた大学院からだった。
…。