五日目ともなると、体が段々慣れてきた。


早起きは習慣となり、睡眠時間が短くても平気になってきた。


そんなある日であった。


放課後、英語科の会議があるとのことで北条昴はあたしから離れていた。


特に仕事も与えられていない為、職員室にある彼の参考書を、彼の席で読んでいた。


なんせクーラーが付いているから涼しいし、そんな所で勉強出来るから頭にも入る。


あたしは読み耽っていたが、現実に戻された。


「…滝沢先生?」


あたしは参考書を閉じた。


「馬場さん!
北条先生なら今会議に行ってるから暫く戻らないよ。」


「そうなんですか…」


一瞬俯いた彼女は、パッと顔を上げた。


「滝沢先生は、今いいですか?」


「今?
いいけど。」


「じゃあ、ちょっと来てもらえませんか?
ここじゃ話しづらいんで。」


「…質問じゃないの?」


「そのつもりだったんですが、人生相談、お願いします。」


彼女はいつもあたしに向ける笑顔を作った。