錆びたドラム缶があって僕はその中にうずくまっている。

太陽がひどく照っているからすごく暑い。

だから僕はこうもり傘をドラム缶に打ち立てて屋根を作ったのだけれども余り効果がない。

「雨でも降って、この中に水でも入れることが出来たら気持ちいいのに」
僕は恨めしそうに太陽を眺めると、目が眩み頭を擡げてしまった。

「あぁ、眩しい・・・・何なんだよ!」

そう言った途端、太陽は雲に包まれた。

僕はまた空を見上げた。

『きっと雨は降らない』と呟いた。

僕は音羽寿太郎、大いなる矛盾を抱えている。

年は17歳、学生だったのだが、日本史の教科書に小村寿太郎という人物が登場してから次第に学校には行かなくなった。

小村寿太郎は外務大臣であったにも拘らず、実は借金まみれで汚い身なりをしていたらしい。

「先生は教科書に出てこない歴史の知識があるのだ・・・!」

それは単に先生が自己顕示欲を満たしたいが為の発言だったのかも知れない。
しかし、友達だと思っていた連中は、その情報を僕とリンクさせた。

大いなる矛盾を抱えている、不登校者。
これが僕の肩書きだ。

そしてその肩書きだけの僕の人生はロクな事が無い。
当初はそんな人生に落胆もしたが、最近ではその落胆も次第に納得に摩り替ってしまった。
そもそも人生は良いものだなんていう方が間違いなのだ。
それは周りの大人達を見達を見て、確率を弾けば、安易に理解することが出来る。

期待なんてものは裏切られるために在るのだ。

だから僕はさっき雲を眺めながら『きっと雨は降らない』そう呟き、それが裏切られる事を願ったのだ。

雨が降らない事を願えば、その期待は裏切られ雨降りに変わる筈なのだ。

僕は大いなる矛盾を抱えている。

「何なんだよ!」
叫んだ途端、太陽は燦然と輝きを増して、僕の目に飛び込んできた。

「うっとうしい!」

僕が叫ぶと突然、後ろから声がした。