そして東京駅近くの居酒屋。

p.m.20:00。

私は今、まっず~い梅酒を飲んでいる。

「なぁ、今日、杉原君は奥田取締役と何か話した?」

後ろの壁に寄り掛かりながら、佐久間主任がぐぃっとオチョコの日本酒を空ける。

結局、部署が違うにもかかわらず(つか、呼ばれていないにもかかわらず)、佐久間主任は株トレの飲み会に便乗。

「男は金を出せば参加していいんだろう?」

佐久間主任は半ばKY横田氏を脅迫しつつ、飲み会に参加。

で、今、とてもまずいことに私の横にビターーーッと横付けしてる。


「杉原!俺、聞いてんだけど?」


やばい。
皆様に解説してる場合じゃない。
……佐久間主任ってば、酔っ払ってるし。
しかも、「杉原」なんて呼び捨て。


「べ、別に課長とは何も話してなんか……」

「課長じゃないだろう。取締役だよ、と・り・し・ま・り・や・く」


しかも、チョー絡み酒らしい。

佐久間主任のリサーチ力は、奥田課長直伝だから、酔ってるっぽいとはいえ下手なことを言ったらまずい!

「奥田かちょ……奥田取締役とは、機械室の出入り口ですれ違った時にお会いしただけです」

うむ。

名回答!

我ながらバッチリ。

その時、佐久間主任の目がキランと光る。


「うそつけ」

「うそなんか……」

「杉原君、君から……ウソの香りがするんだよ」

「私、うそなんかついてません!」

「……ハイヤー エナジー オードゥ トワレ」

「えっ?!」

「ディオールの香水」

「……香水?」

「奥田取締役の香水の名前だよ」

「えっ!」


佐久間主任の鋭い観察眼に、反射的に立ち上がってしまう。